寒い日は、心も体もあたたまる熱々のうどんが恋しくなりませんか? 名古屋めしを代表する味噌煮込うどんの老舗『山本屋本店』。食べ応えのある硬さの麺と深い味わいのスープ、グツグツと音を立てる土鍋に魅了されるファンは後を絶ちません。今回は山本屋本店 エスカ店で、長く愛され続ける伝統の味の秘密を探ってきました。

名古屋駅直結! 創業117年の味噌煮込うどん専門店

▼出張や観光で立ち寄る人が多いのだとか
▼約60席ある落ち着いた雰囲気の店内。8人掛けの広々としたテーブル席も完備

明治40年に創業し、味噌煮込うどんを看板メニューとする山本屋本店。エスカ店は、名古屋駅新幹線口まで徒歩約1分と近いことに加え、大人数から少人数の席まで用意されており、一人でも気兼ねなく入店できるのが魅力です。

店内足を踏み入れた瞬間から漂う出汁の香りに、思わずお腹が鳴ってしまいました。「入口まで出汁の香りがすることに驚かれるお客さまも多いですね」と店長。

一番人気は伝統の「味噌煮込うどん」

▼生卵、ネギ、油揚げがのった「味噌煮込うどん」(1,518円)。どの味噌煮込うどんにも漬物がセットでつきます

グツグツと音を立てて運ばれてきたのは、一番人気のシンプルな「味噌煮込うどん」。「食べ応えのある麺とスープのうまみをストレートに味わえる」と、根強いファンが多いのだとか。

蓋を開けると、土鍋から湯気と出汁の香りが立ち上ります。太めの麺の上には、鮮やかな黄身の生卵。麺を箸で持ち上げると、普通のうどんとは異なる弾力と重みを感じます。

一口含むと、”すする”のではなく”食べる”と呼ぶのがしっくりくる、どっしりとした噛み応えに驚きました。この食感はクセになります!

スープをすすれば、豊かな出汁の香りが鼻を抜けていきます。舌で味噌と出汁のうまみをしっかりと感じるのに、全くしつこくないのが不思議です。

熱々にこだわる”おもてなし”の技

▼土鍋の蓋には蒸気抜きの穴がありません。なぜなら蓋を取り皿として使うから。保温のための蓋が食事中も活躍する粋な演出なのです
山本屋本店では、伊賀土で作ったオリジナルの土鍋を使用しています。保温性に優れたこの土鍋で、火から離して30秒以内にお客さまの元へお届け。「目で見て、耳で聴いて、香りで感じる。グツグツと煮立つ瞬間のおいしさを存分に楽しんでいただきたいんです」と店⾧。

新人スタッフはこの感動を確実に届けるため、熱々の中身が入った重さ1.5キロの土鍋を安全かつスピーディーに運べるようになるまで、何度も練習を重ねるそう。

麺は”具の一つ”? 独自の食感の理由とは

▼独自の硬さにこだわり抜いた麺。希望があれば麺の硬さの調整も可能
山本屋本店の麺は、一般的なうどんのようにすするのではなく、しっかりと噛みしめて味わいます。この独特の食感には、興味深い歴史が隠されていました。

山本屋本店の味噌煮込うどんの原点は、農作業の合間に食べられていた郷土料理。
当時は出汁の中に団子や野菜を入れて食べる質素な一品でした。その団子がうどんへと進化を遂げ、今日の味噌煮込うどんが生まれたそう。

うどんを”鍋の具の一つとして食べるもの”と捉えているため、しっかりと存在感のある、食べ応えのある麺に仕上げているのです。

▼朝一番に届いた麺はランチタイムまで、午後に届いた麺は閉店まで使用一般的なうどんは小麦粉・水・塩を練って作られますが、山本屋本店では塩を使わず、水と小麦粉だけで麺を打ちます。塩を使わないため、麺が水分を吸いづらくなり、煮込んでも独特の歯ごたえが保たれます。

中村区にある工場では、日々変わる気温や湿度を考慮しながら自家製麺を製造、出来上がった麺は1日2回、各店舗へ配送。常に打ちたての麺を提供できる体制が整えれているんですね。

選ばれし”煮方”が守る伝統の味

▼店舗に届いた打ち立ての麺を”煮る”専門の職人が仕上げます
各店舗には麺を茹でる「煮方」と呼ばれる職人がいます。麺を入れるタイミングは、実はマニュアル化できないのだとか。

出汁の温度や状態によって麺の煮込み加減が変わるため、絶妙な火加減の見極めが必要です。冷たい状態で麺を入れると伸びすぎ、沸騰したスープでは硬くなりすぎてしまう。一番良い状態を見定める熟練の目が、おいしさの決め手になっています。

煮方は調理補助からキャリアをスタート。厨房指導の専門部署が適性を厳しく見極めながら育成、適性を認められた者だけが一人前の煮方になれるそう。その選りすぐりの職人たちが、山本屋本店の伝統の味を支えているのです。

秘伝の味噌と出汁が織りなす深い味わい

▼赤味噌の深いうまみと渋み、白味噌のまろやかさ、ザラメの甘みが合わさった「あじ味噌」
濃厚でありながらくどさを感じさせず、ついつい飲み干してしまう山本屋本店のスープ。この要となるのが、3年間熟成させた愛知県産の赤味噌と白味噌に、ザラメを加えた特製の「あじ味噌」です。この配合は極秘とされており、一部の選ばれた社員しか知らないそう。

▼素材のうまみや香りを最大限に引き出すよう設計された、特注の羽釜で仕込まれた出汁
そして味噌の魅力をさらに引き立てるのが、店内に漂う香り高い出汁。各店舗に出汁をとる専用の大きな羽釜が設置されており、毎朝仕込んでいます。

出汁は、うまみと甘みのある「むろあじ節」と、香り高く濃厚な味わいの「宗田かつお節」の2種をブレンド。さらに鶏ガラでコクを加え、愛知県産のたまり醤油で味を整えることで、うまみたっぷりのあじ味噌に負けない、奥深い出汁が完成します。

味噌煮込うどんの楽しみ方は”卵”で決まる

▼スープに卵の黄身が映えて食欲をそそります
どの味噌煮込うどんにも生卵が1個ついてくるのですが、卵の食べ方で味噌煮込うどんの味わいが大きく変わってくるそう。

「はじめからスープに溶いて味わいをまろやかにする方、蓋に卵を取って溶いてすき焼きのように召し上がる方、スープの余熱で半熟に仕上げて具として味わう方など、いろんなお客さまがいらっしゃいますよ」と店⾧。

今回、筆者は半熟卵にしてスープと一緒に食べましたが、卵のとろんとした濃厚さとスープの濃厚さが口いっぱいに広がって、その贅沢な味わいに酔いしれてしまいました。

ちなみに、店⾧はスープを最大限に味わうため、卵は別で持ってきてもらうそう。
「ご飯を追加で注文して蓋で卵かけご飯を作ったり、それにスープをかけて雑炊風にしたりして食べるのが好きです」と、通な食べ方も教えてくれました。

冬のおすすめメニューもご紹介!

▼毎年リピーター続出の「牡蠣入り味噌煮込うどん」(2,728円)
冬に登場するのが、数ある限定メニューの中で人気1位だという「牡蠣の味噌煮込うどん」。山本屋本店の味噌に合う牡蠣を求めて、全国各地の産地を検討した末、宮城県石巻市の牡蠣に行き着いたのだとか。

石巻産の牡蠣は、味が濃くてクリーミー、プリッとした食感が特徴。山本屋本店が定める基準の大きさまで育った牡蠣だけを仕入れ、毎日産地から店舗へ直送します。

今年は天候不順で牡蠣の生育が遅れ、11月の提供開始が見送られたほど。それだけ牡蠣の品質にこだわっているからこそ、毎年冬の訪れを心待ちにするファンも多いそうです。

▼一口では頬張れないほどの大きさの牡蠣
一口食べると、ふっくらとした牡蠣の食感とミルキーな味わいが口いっぱいに広がります。牡蠣のうまみが溶け出したスープは、もう絶品。寒い季節にこそ味わいたい贅沢な一杯です。

自家用にも帰省にもピッタリなお土産もあります

▼「生麺 生味噌煮込うどん(1食入)」(615円)
「家でも山本屋本店の味噌煮込うどんが食べたい!」「手土産として持っていきたい!」という方には、エスカ地下街にある山本屋本店の売店がおすすめ。

麺・あじ味噌・かつおだしのセットなど、手軽に本格的な味噌煮込うどんが楽しめる商品を販売しています。麺は生麺と半生麺の2種がありますが、よりお店の味が再現しやすいのは生麺タイプとのこと。

▼カレー煮込うどん専門店「鯱市」とコラボした「生麺 カレー煮込うどん(1食入)」(626円)
20種類以上のスパイスを贅沢に使用した、和風出汁ベースのカレー煮込うどんも隠れた人気商品。スパイシーで濃厚なスープが、クセになること間違いなしです。

冬のエスカでホッとあたたまる感動の一杯を!

グツグツと煮立つ土鍋から立ち上る湯気と香り、そこに込められた職人たちの想いと技。さむ~い冬の日は、ぜひエスカで至福の味噌煮込うどんを味わってみてください!

※価格はすべて税込です。
※メニューの詳細については、店舗へお問い合わせください。

店舗情報
山本屋本店 エスカ店
営業時間:10:00~22:00(ラストオーダー21:30)
電話番号:052-452-1889